常歩(なみあし)剣道とは

「常歩(なみあし)」という名称から、「常歩剣道(なみあしけんどう)」は歩み足のような特定の足さばきを用いた剣道、ととらえている人は多いようです。しかしそうではありません。「常歩」とは、合理的な身体操作の仕方(体の使い方)の考え方、原理であり、その原理に基づいた剣道が「常歩剣道」です。

 筑波大学剣道部を卒業後教員を務めていた木寺英史氏は、アキレス腱を断裂したことをきっかけに、自分の身体の感覚として、合理的で、かつ楽で心地いい動きを研究し始めました。そして最初に着目したのがかつての日本人がしていた伝統的な歩き方、走り方でした。かつての日本刀の操法は、当時の日本人の歩き方を前提にしたものだったと考えたからです。

 そしてインターネットを通して知り合った小田伸午氏(関西大学人間健康学部教授)、小山田良治氏(愛知県・五体治療院)らと共同研究を始めました。かつての日本人の歩き方とされる「ナンバ」を研究していくなかで、それは一般に言われるような片方の手と足が同時に前に出るような歩き方ではなく、体に左右二本の軸を形成して動く歩き方、走り方であるという結論に達します。二軸を作って進む馬の歩き方からとって、それを「常歩(なみあし)」と名づけたのです。

 その後、小田氏、小山田氏、木寺氏の3人を中心に、さまざまな種目のスポーツ選手や研究者が加わり、「常歩」つまり合理的な身体操作の研究を重ねていきました。

 2004年に木寺氏は処女作である『本当のナンバ 常歩』(小社刊)を上梓し、大きな反響を呼びました。その後、「常歩」による剣道をはじめとして、歩き方やスポーツ各種目に応用できる「常歩」に関する著作を重ねています。小田氏、小山田氏らの著作、研究グループによる共著も多数あります。

 グループで研究を続けていく中で「二軸動作(感覚)」だけでなく「骨盤の前傾」「外旋立ち」に代表される姿勢や、「肩甲骨の外放」「股関節の外旋」「膝の抜き」「踵の踏み」などの身体操作、さらには「垂直感覚」「水平感覚」「同側感覚」「屈曲感覚」などの身体感覚を提唱し、それらを習得するためのストレッチやトレーニング法などの開発を続けています。

 2015年に木寺氏は『常歩剣道 伝統的打突法』(小社刊・ムック)を刊行。数年前から九州共立大学で剣道部を指導するようになった木寺氏が、学生への指導の経験を通じて、「左荷重」の重要性に気づいたことから、最初の著書から10年を経て見出した「常歩剣道」の習得法を詳しく解説しています。「左荷重」で打つ剣道とは、かつての名剣士たちが実践していた剣道の伝統的な打突法そのものですが、現在の多くの剣士たちはそれが身についておらず、「左荷重」を忘れてしまったことが、現在の剣道の技術が従来の技術と違ってきている原因であると指摘しています。

『本当のナンバ 常歩』を刊行した当時は、剣道以外のスポーツ選手や身体操作に関わる方々からの反響が大きかったそうですが、剣道界にもその考え方は浸透し、七段、八段への昇段に大いに参考になったという剣士の声も届いています。また、すでに八段になっている剣士が「常歩剣道」に取り組んでいる例もあります。

常歩(なみあし)による打突
構えは股関節を外旋させ、つま先は外を向く。腰を入れず、骨盤を前傾させ、左足に荷重します。
打突後、引きつけた左足が右足を追い越すのは自然なことと考えます。
『常歩剣道 伝統的打突法』では段階を経てこの打ち方を身につける方法を詳しく解説しています。
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 常歩の研究は日々深化しています。「常歩(なみあし)身体研究所」のHPでは、より詳しい情報や、セミナー・講習会の告知、関連著書や動作改善のためのグッズなども紹介されています。

常歩(なみあし)身体研究所HPへ

木寺英史氏の本

常歩剣道 伝統的打突法
伝統的打突法表紙
2015年6月刊行/ムック・B5版96ページ/¥907+税
「常歩剣道」を提唱してから10年を経て、「左荷重」がその入口であることに気づいたことから、剣道の伝統的な打突を身につけ、さらに発展させて「常歩剣道」を習得する方法を、豊富な写真を駆使してわかりやすく解説しています。

日本刀を超えて
日本刀を超えてカバー
2013年12月刊行/書籍・四六判192ページ/¥1,404(税込)
日本刀が実用的な意味を失って久しい現代において、竹刀は日本刀の代用であるとする「日本刀代用論」によって、剣道の発展は可能なのか?剣術から剣道への歩みをたどり、「剣道の理念」を検証した上で、「日本刀」ではなく日本人の伝統的な「動作原理」を基盤に構築した剣道論。「単え身(ひとえみ)」による「剣道らしい剣道」とは何か?

常歩式スポーツ上達法
常歩式表紙
2007年5月刊行/書籍・A5判192ページ/¥1,512(税込)
「常歩(なみあし)」は人間本来のナチュラルな動きを取り戻し、あらゆるスポーツのパフォーマンスを飛躍的に向上させる身体操作である。基本となる身体の使い方から実際の動きを身につけるまでを、陸上、サッカー、スキー、バレーボールなどを例に解説(剣道は取り扱っていません)。

本当のナンバ 常歩

常歩カバー
2004年2月刊行/書籍・四六判232ページ/¥1,404(税込)
「常歩(なみあし)」理論の原点となる木寺氏のデビュー作。当時盛んに唱えられた「ナンバ」をあらゆる視点から検証しながら、「常歩」にたどりつくまでの経緯を解説。「常歩」の基本的な歩き方、走り方、「常歩」による剣道などを身につける方法を解説した、超ロングセラー。

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