シリーズ「だから子どもが増えている」03「選手として活躍」「健康な子に」どちらも受け入れるための「コース分け」

道場訓

 私は、小曽根剣友会で剣道を始めました。私が子どもだった頃は剣道ブームのまっただ中で、たくさんの人数がいました。

  社会人になってしばらく経ってから小曽根剣友会に戻ったのは、いまから15年以上前のことですが、そのときは10人ぐらいしか稽古に来ないような道場になっていました。

  その一方で、隣にある寺内剣友会には30人くらいがいつも来ていました。しかし、ここの子どもたちは、高学年になるとみんなやめてしまっていました。この地域は中学受験の率も高い、勉強熱心な地域なのです。小曽根剣友会のある地域は、いわゆる下町で、「毎日稽古があって厳しいぞ」という内容でも稽古を望んでいる。そんな負けん気の強い子が多いところです。

  もともと二つの剣友会はひとつの団体として活動していたのですが、ある時期から地域性を考えて分かれて活動を続けていました。しかし、実質的にはつぶれかかって、赤字で運営を続けていた小曽根の現状を考え、もう一度二つの剣友会をひとつにすることにしました。その初年度に行なったのが、入会した方に防具をプレゼントする、というプランだったのです(第1回の記事に掲載)。これでいきなり20人の新入生が入ってくれました。

  ところが、小曽根のなかにも「毎日練習はしたくない」「試合にはあまり出たくない」という子も出てきました。その一方で、週数回の稽古だった寺内のほうでは逆に「試合に出たい」「もっと稽古をつけてもらいたい」「中学校になっても剣道を続けたい」という希望者が2、3割になってきました。

  そこで私が考えたのが「選手コース」と「育成コース」というコース分けです。少年剣道ではまずこうしたコース分けはないと思いますが、水泳教室でも選手クラスは別途、強化クラスが設定されていて練習回数も多くなっています。その発想を剣道にも取り入れたわけです。

「育成コース」は、体育やスポーツ的な感覚で、「選手コース」は武道的な感覚といえばいいでしょうか。育成コースは「練習日」、選手コースは「稽古日」、そういう感覚の違いがあります。武道というのは、現代社会にはそぐわない理不尽なところもあり、いろいろな部分で受け入れにくいところもあります。そういう部分も受け入れられる親子を、「選手コース」として受け入れるようにしています。

  現在、選手コースの稽古はひと月約25回、それに対して育成コースは平均してひと月約10回です。つまり、選手コースの子どもたちは、育成コースの2、3倍稽古をしています。しかし、会費はどちらのコースであっても同じ3000円です。

「同じ金額で、育成コースの子どもたちの倍なり2・5倍なりの練習ができるのだから、そのぶん保護者はそれだけの奉仕をしてください。そしてその奉仕は、自分の子ではなく、会の運営者・役員として、育成コースの子たちにしてください」

  と、入るときの心構えは事前に言っています。それを承諾してくれた親子に、選手コースに入ることを許可しているのです。これは強制です。そうでないと役員逃げが出てしまうからです。これによって、子どもの保育的な要素は、選手コースの親が担当し、剣道の技術的な部分は指導者が見ることができるのです。たとえば「背中がかゆい」「トイレに行きたい」「この防具はどうしたら……」といった、子どもたちや育成コースの保護者が思っていることは、選手コースの保護者が面倒を見ます。育成コースの親は、ひと月に1回、体育館の開け閉めと出席確認に1時間ぐらい来てもらいます。

あとは「年1回の総会に親として責任を持って来て下さい」とお願いしています。育成コースの場合は「ひと月に10回来れば、あとは手間暇はいりません」ということを、地域にもしっかり伝えています。

  稽古の内容は、学年ごとで分けていますが、コースによって変わることはありません。いっしょにできることは極力いっしょにやります。ただし、剣道に対する意識は違います。

「育成コース」が胸を張れるように

  選手コースにいる子は、全体の3割半ぐらいですが、優越感にひたることはおそらくありません。なぜなら、しんどいからです。選手コースは対外試合に出ますから、レギュラー争いがついて回ります。

コースのなかで順位がついてきて、それはつねに変わっていきますので。

  それから、選手コースにいる子が育成コースの子に対して偉そうな態度を取ったり悪いことをしていたら、その瞬間に選手コースから外します。剣道は人間形成が目的です。礼儀作法も、ただあいさつすることが礼儀ではありません。人を傷つけたり、天狗になることは、決して許しません。

  いったん「選手コース」に入ったのだが、再び「育成コース」に戻してほしい、という人も当然出てきますが、それは即認めています。

  よく「◎◎先輩が◎◎大会で優勝しました。先輩みたいに強くなるようがんばりましょう」という先生がいますが、うちではそうしたことはいっさい言いませんし、表彰もほとんどしません。私は、育成コースにいる子どもたちが胸を張って「ぼくたちの道場だ」と通える場にしたいとつねに思っています。極端に言えば、「毎日稽古している選手コースが普通じゃないんだ」という運営の仕方をしています。

 ひと月25回稽古している子に対して、10回の子が対戦しても、普通は勝てるわけがありません。

 ひと月10回稽古をしている子に対して「先輩に続け」と言ったところで、まったく関係のない話です。そんな結果のことを持ち出すことより、毎日の稽古で「まっすぐ打てたね」「今日はまた上手になったね」と言ってあげるほうが、よっぽど彼らにとっては大切なことです。

  ただし、部内試合ではトーナメント表を作るとき、育成コースと選手コースのヤマに分け、決勝戦では育成コースが一本リードしたところから始める、つまり、引き分けだったら育成コースの子の勝ち、といった工夫をすることはあります。区別はしても差別はしない、それが会の基本的な方針です。

(『剣道日本』2011年7月号掲載)

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