シリーズ「だから子どもが増えている」01 毎年20人以上が入会!その裏にあるさまざまな工夫

「初心者の部」の子どもたち

 これは剣道の世界ではあまり浸透していないことかもしれませんが、保護者の方々はまず、公園で友達をつくります。いわゆる公園デビューです。それから「○歳検診」という定期検診も、友達をつくる大きな場になります。そういう人たちがまた同じ幼稚園や保育所に進み、また友達の輪ができます。この段階で「仲良しグループ」がほぼ決まってしまいます。このグループの誰かひとりでも剣道のほうに向いてくれれば、ほかの人も一緒に、つまり数珠つなぎで興味を持ってくれます。もしグループが5人程度いて、それが3つまとめて入会してくれたとすれば、それだけで15人入ってくることになるわけです。実は、私が社会人になり、小曽根剣友会に戻ってきた最初の年がそうでした。そのほかにも個人で入会してきた子が5人、合計20人が、新たな小曽根剣友会のスタートでした。いまから14年前のことです。

 このとき、私たちは新規会員に対して防具一式をプレゼントするという方針を打ち出しました。「本当にもらえるんですか?」と驚かれました。グループ単位で入ってくれたのも、防具のプレゼントにインパクトがあったのでしょう。

 この防具のプレゼントの仕方に、工夫をしています。会の月会費は月3000円で、入会金が1500円です。まず、入会してくれた人には竹刀を一本プレゼントします。実はこれは入会金に相当するわけですが、「プレゼントされたのだから、がんばるぞ」という気持ちにはなるでしょう。入会して2カ月すれば、道着と袴をプレゼントします。これは名前つきの新品です。それまでジャージでやっているわけですが、やがてお兄ちゃんやお姉ちゃんたちの道着姿にあこがれを持ちます。2カ月ごろに新品をお渡しすると「ついに着られる」といううれしさが自然に湧くわけです。これでまた新しい気持ちでがんばってくれます。

 そして12月、「クリスマスイベント」として防具一式をプレゼントするのです。入会しておよそ9カ月が経ったころです。年末年始、親戚たちが集まれば、「防具を着けることになったんだ!」という話題で盛り上がるかもしれません。私たちの希望としては、正月に防具を着ける練習をしてほしいという思いもあります。

 竹刀も道着も防具も、相手側から見れば「もらった」という感覚になりますが、これはほとんど月会費でまかなっています。防具だけは少し先行投資ですが、ひとつの防具はだいたい3、4年使うことができますので。

 もともとは赤字経営で、最初のころは自分たちで身銭を切らざるをえない状態でした。しかし、この年20人、さらに翌年も20人、と継続して入会があったことで、財務状況は改善されていきました。毎年、20人以上が入会してくれていますし、平成22年度は初めて新規の入会者が40人を超えました。

 現在は「中学生割引」「兄弟割引」などもしていて、未就学児も月会費は半額にしています。しかし、それでもいまは約180人の会員がいますから、かなりの金額になります。いまは会費でしっかりと会を運営していますが、それだけの会員がいる理由は、辞める人が少ないから。言い換えれば、辞めさせないための取り組みがあります。

 そのひとつが、「子どもたちが『どうしてもやりたい』と言ったら入会できる」です。親が「子どもにやらせたい」と言って入会させるのは、受け入れません。押しておきながらスッと身を引くような感じです(笑)。子どもたちに意識のないまま親が剣道をやらせてしまうと、子どもから「やめる」と言うケースが多い。だから「お母さんになんとか頼んで、剣道をやらせてもらった」という、いわば親への貸しをつくってから入会してもらうのです。子どもであっても約束したことに対しては責任感は持っています。親のほうも月会費を払い続け、さらには防具もつけているわけですから、「あなたが入りたいと言ったのだから、少々のことじゃやめられないよ」と言うこともできるのです。

 ほかにもいろいろな取り組みをしていますが、それについては少しずつ紹介していこうと思います。

 ただ、ひとつ言えることは、いいものは「独占しよう」としがちですが、そうではなく、「広めよう」という気持ちを持つこと。これは私ももちろん、剣道をしている方すべてが持ってほしい気持ちです。

 これは、入会を検討している保護者や子どもからよく尋ねられる質問のひとつです。

 私は学生時代、水泳教室のインストラクターをしていました。そこでもやはり、保護者の方から水泳の利点について聞かれますので、インストラクターはこうした質問には必ず答えられるよう、教育を受けています。たとえば、

「海や川で泳いでいてもおぼれない」

「全身運動で健康にいい」

「有酸素運動でダイエットに効果的」

といった効能があります。

 しかし、水泳というのは、ほとんどの大人は経験がありますので、効能というのは自分なりに分かっている部分もあります。ところが、剣道になれば、見たことしかないという親子が多いでしょうし、女性であればなおさらです。

 剣道で礼儀正しくなるかといえば、決してそんなことはないと、私は思います。なるかならないかは、まずは本人の問題です。それから、礼儀についてうるさく言う指導者につけば礼儀正しくなるかもしれませんが、うるさく言わない先生についたら全然礼儀正しくはなりません。それこそ、ただのたたき合いになってしまう危険性だってあります。

 断言します。これに答えられるかどうかが、少年剣道の普及能力があるかどうかの入り口です。ぜひ、考えてみてください。

(『剣道日本』2011年4月号掲載)

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