左拳が中心から外れた技が古流にある。それは柳生新陰流の「極意の打ち」

2017-7-28

 現代剣道では左拳が常に身体の正中線上にあることが正しいと一般に教えられます。左拳が中心を外れた打突は、「正しい剣道」ではないとして戒められることが多いようです。しかし、江戸時代の武士の技をそのまま守っている柳生新陰流の中に、左拳が中心を外れた切り方をする技があります。そしてその技こそが「極意」なのです。

 ムック『柳生新陰流 歴史・思想・技・身体』の中で紹介している、三学円の太刀「斬釘截鉄」がその技です。同書では以下のように解説されています。

斬釘截鉄(ざんていせってつ)

 身体の中心をまっすぐ打たないで右膝通りの線を打ち(これを「斬釘の打ち」という)、右に壁をつくり相手の太刀が働かないおうにする珍しい太刀筋で、柳生新陰流の特徴の一つである。「斬釘の打ち」の低いものを「極意の打ち」といい、右膝通りの線を「極意の線」と呼んでいる。(中略)「右膝通り」に切るとは、右に壁をつくって相手の反撃を不能にするのである。もし、これを自分の中心軸に沿って切れば、相手は右小手を切ることが可能になる。

両者の攻防は横から見ると日本剣道形にもあるような返し技(当たり拍子に受ける、という受け方)ですが、

使太刀(勝つ側)の動きを正面から見ると、以下のような打ち方をしています。

この他にも「くねり打ち」と呼ばれる、左拳を中心からはずし右の腕の下に密着させるようにして打つ方法があります。これは多くの技において使われており、膝を「エマして」打つ、高度な技術の一つです。

くねり打ち(天狗抄「花車」)

 こうして見てくると、「左拳は常に正中線上に」という教えは現代剣道特有のもので、実際に敵と切り合った人たちの刀法、剣術とは別の哲学に基づくものといえるでしょう。武士たちが実践していた日本刀の操法を学びたいのであれば、古流剣術を学ぶ必要があります。技の一例を挙げましたが、『柳生新陰流 歴史・思想・技・身体』にはタイトル通り、剣の思想や身体についても気づかされる内容が豊富に詰まっています。

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