「勝負十二訓」とは何か 會田彰範士著『剣道・勝負への道』より

2016-6-9

 平成28年5月に発刊された『剣道 勝負への道』。指導者として経験豊富な鹿児島の會田彰範士が、試合はもちろん昇段審査にも通じる、剣道の技術について、平易な言葉で解き明かしています。

 會田範士の説く「勝負十二訓」とはどんなことでしょうか。同書の中からそのごく一部を紹介します。

勝負十二訓写真

勝負十二訓

 私が剣道を始めたのは幼少期ではなく、高校生の時でした。鹿児島県立甲南高校在学中の、2年時の9月です。

 それまで所属していたのはバレーボール部でした。当時はGHQ政策によって学校剣道が禁止されており、甲南高校にも剣道部はなかったのです。しかし、その政策が解除され、学校剣道が解禁となると、同校剣道部も復活の運びとなりました。

 私も剣道部に転部することになりますが、みずから勇んで剣道部を目指したわけではなく、転部させられたというのが実際のところです。当時の校長は、教職にあった私の父の知り合いで、その校長が、剣道部の顧問予定の先生にこう指示したのです。

「會田さんの息子がバレー部におるから声を掛けろ」

 それが転部のきっかけでした。集められた剣道部員は、私も含めて全員が剣道初心者でした。

 2年生の9月から始めた私が県大会に出場したのが、3年生になってまもない6月。剣道経験はおよそ9カ月です。しかし私は、その大会の個人戦で優勝を収めることができました。勝利の喜びが、私の中でなにかを目覚めさせたのでしょう。将来も剣道を活かす道を考えた私は、教職を目指して、鹿児島大学教育学部高等体育科に進みました。

努力の目安を解りやすく説く

 鹿児島大学卒業後は教員になり、県内の四つの高校で20年間保健体育教師を務め、剣道部の指導も続けました。

 その後17年間、教育委員会と校長職を行き来しながら、最後は鹿児島南高校の校長を務めている時に定年を迎えました。

 その後は志學館大学の剣道部師範(当初は前身の鹿児島女子大)を務めること14年。74歳まで務め、今は母校である鹿児島大学の師範として剣道部員の指導にあたっています。

 要は、剣道の修行の道は人それぞれいろいろありますけれども、私の場合は指導者として長く剣道に携わってきたということです。もちろん指導と同時に、自分自身の修行の延長として、全国教職員大会や全日本都道府県対抗優勝大会などで試合の経験もずいぶん積んできました。

 その一つの集大成というと大袈裟ですが、指導に活かすものとして、平成21年夏、73歳の時に「勝負十二訓」をまとめました。

 勝負に勝つためには工夫することが必要です。まして、剣道の勝負は一瞬です。わずかな一瞬を支えるために必要なのが、長くて幅広い努力の積み重ねです。

 その努力のしかたの目安になるものを作りたかったわけですが、私が指導してきた高校生も大学生も、勉強と両立しながら剣道に励む子たちですから、剣道一筋の修行者とはちょっと違います。難しい教えを説いたところで理解がついていきません。そもそも、いかにやさしい表現で、いかに的を射た指導ができるか、というのが私たち教育者に突きつけられた課題ですから、難しい言葉を抜きにして、平たい言葉で解説を施したいという気持ちは、かねてから強く抱いていました。

 そうして十二訓としてまとめ、その文字を手ぬぐいに染めて知人や教え子に配ったのです。

工夫する力をつけさせる

 ものごとを伝える指導者は、ある意味言葉探しの仕事でもあると思っています。どういう言葉であれば分かりやすく伝えられるか。そのためにいろいろ本も読みましたが、一番影響を受けたのは、若い時に買った『歌伝  剣道の極意』という阿部鎮先生の著された本でした。歌として剣道の教えが分かりやすく載っており、例えば、次のようにも詠まれています。

 剣道は 人に勝つより 我に克て

 人に勝つ理を 学びながらも

 指導者の中には「俺の背中を見て学べ」という昔ながらの指導をされる方もおられますが、それだと子どもたちは「教えられて、させられてする剣道」になるように私には思えるのです。

 一方、私が子どもたちに求めて欲しいのは「教えられて、自分で工夫する剣道」です。

 二つの内容は大きく違うと思います。自分で工夫させるためには、まず理解する時間を作ってあげることを考えなければなりません。教育者の務めとして、分かりやすく伝えることが、その重要な時間を与えることになるのです。

 剣道は、いざ勝負が始まれば誰も助けてはくれません。だから日頃から、自分一人でなんとかできる力を養っておくことが必要なのです。勝負とは、「工夫する力をつけること」ととらえてもよいでしょう。その力を大事にして取り組めば、試合の勝った負けたに一喜一憂しながらも、その結果をまた次の勝負の糧にできるはずです。そうして、剣道の勝負を通じて、人間的にも成長していって欲しいと願っています。

『剣道・勝負への道』の詳しい内容・購入はこちらへ

剣道日本&新刊 PICKUP記事

  1.  現代剣道では左拳が常に身体の正中線上にあることが正しいと一般に教えられます。左拳が中心を外れた打突…
  2.  平成28年5月に発刊された『剣道 勝負への道』。指導者として経験豊富な鹿児島の會田彰範士が、試合は…
過去の記事

おすすめ記事

  1. 平成29年8月12日、インターハイ最終日の競技が行なわれ、男子団体決勝では高千穂(宮崎)が島原(長崎…
  2. 8月11日、前日1時間を超えて決着がつかず異例の再試合となった男子個人の岩切勇磨(九州学院・熊本)×…
  3. 平成29年8月11日、男子団体戦終了後、女子個人戦の1回戦から4回戦が実施され、ベスト8が出揃った。…
  4. 平成29年8月11日、インターハイ剣道大会(第64回全国高等学校剣道大会)は、朝9時より男子団体戦予…
  5. 8月10日、女子個人戦終了後、男子個人戦の4回戦までが行なわれた。ベスト8が出揃う予定だったが、岩切…
大会結果応募フォーム
大会告知応募フォーム

剣道 新刊

ページ上部へ戻る